―気まぐれFull moon―
                     その1


「アッシュー!!ユーリー!!」

そう叫びながら、肩を並べて歩いていた2人に飛びつく。

「わわっ、なんスか?」

「むっ何の用だスマ」

僕はさっきテレビ見てて、いいコト聞いちゃったんだ〜。

「ネェネェ、今日お月見しない?」

「ほぉ、月見か」

「しっかし、またなんで急に?」

その訳はネェ〜、

「だって、さっきギャンブラーニュースでね、今日は満月だって言ってたんだヨ〜」

これはやっぱお月見しなきゃ〜、せっかくお月様が出てるんだから

もったいないジャン。

「・・・・・・・・・お団子目当てッスね」


 ギクリ


「・・・や・・・やだナァアッシュ君、ぼ、ボクはただお月様が見たいだけで・・・」

そんな疚しい気持ちは一切無い!!!・・・・・・と断言できないから困ったもんだ。

「じゃ、お団子作んなくてもいいッスよね」

「うっ・・・」

それは・・・それはやっぱり嫌なんだけど。

しかしああ言った手前今更いるとは言い辛い・・・と思っていたら救いの声が。



「犬、作れ」


そう、今まで黙ってたユーリだ。

あぁユーリアリガトー!

心の中でそう感謝してるのに、その次の言葉が・・・、

「作るのが大変だろうから私の分だけ、それも少量で良い」

オーマイガー!!ユーリったら何言い出してんだ!

「分かったッス。甘さは控え目ッスね」

「もちろんだ」

あぁそうかと思った。

こーいうのを瞬時に企んでるってのがアッシュには分かったから、

あえて犬と呼ばれた事を甘んじたんだ・・・、いつもなら

「犬じゃないッス!!狼ッス!!!」とか言って怒ってるのに。

こうなったら・・・こうなったら言うしかあるまい。

後で後悔するよりマシだ。

「アッ・・・アッシュ!!」

「ん?何スか?ス・マ」

くっ、シラきっちゃってるし〜。



「ボ・・・ボクもやっぱりお団子食べたい!!」


と発言すると、

ただでさえゆるんでるアッシュの顔が、より一層ゆるむ。


にへら〜って感じに。

もちろんユーリも。

「やっぱりッスね〜」

「初めからそう言えば好いものを」

くやしい、何か物凄く。

「で、スマはやっぱり飛びっきり甘〜いのッスよねぇ」

「そりゃもちろん!」

ハッ、つい条件反射で答えてしまった。


おかげで2人の顔が更にゆるむ。

このゆるゆるさはゴムの通ってないハーフパンツみたいだ。

「はいはい、姫君のために甘〜いお団子つくるっスよ」

……なんかすごくバカにされてる気がするんだケド〜。

まぁ考えたら負けだ、お団子が食べれる、それだけでもう十分ダ。

後は、晴れるのを待つばかり。

天気予報で晴れるっていってたし、大丈夫ダヨネ〜。

事実、今もおてんとさまがまぶしいくらい輝いてるし。





















テンキッテノハドウシテコウ、コロコロカワルンダ。



――――ザーーーーーッ



もうこれ以上ないっ感じの土砂降りの雨。

うちの城古いから最上階とか雨漏りしてるはず、絶対に。

ここは高台に建ってるからいいけど、下の方とか洪水になってやしないだろうか。



いや、そんなことより今は、今は……




お月見が出来ないってことが大事なんダヨ。




「ウグッ、ヒック…」

「スマ?」


あ…

ヤバイ、

うー、アッシュこっちみないでヨ〜。


「う、うわあぁぁぁあん、ヒック、ぐすっ」

「ス、スマ!?」

いきなり泣きはじめたボクに戸惑いを隠せないアッシュ。

もう見ないでヨぉ〜。


そんな感じで泣くこと数分、

さっきからずぅ〜〜っとオロオロしてるアッシュのほっぺたに


お団子作ってたときについたと思われるアンコがついてたんダヨ。





「ねぇアッシュ〜」


ボクが泣くのを急にやめて、

ニヘラ〜って笑ったのにびっくりしながらもアッシュが聞いてくる。


「なっなんスか?スマ」


「ほっぺたにアンコついてるよぉ〜」

「えっ?わ、本当ッス」

アッシュは急いで自分の手の甲で拭おうとしたけど、

そうはいかないもんねぇ〜。


ボクはアッシュの手を押さえると、

顔を近づけ、アンコをペロッっと一舐めで口に含む。


「ス、スマッ!?」


まぁ、さっき慰めてくれた?お礼のようなものサ。




「へへっ、オイシ〜」

ちょっと笑いながらそういうと…






ガバッ!



「ふみゅ!?」


「あぁスマ可愛すぎッス〜!!!」


わわっ、アッシュったら、

ジタバタと手足を動かしてみても効果なし。

まぁボクのためにワザワザほっぺたにアンコまでつけて

お団子作ってくれたんだし、


今だけは好きにさせてあげとこ〜…と思ったんだけど……




そうされてること数分。


アッシュ〜、いい加減飽きないのかナァ。


…あれっ?ユーリは?

そういえばさっきから姿を見かけないナァ。




「ねぇアッシュ?」

「んぁ、なんスかスマぁ」   この人ダメだ…。


とりあえず意を決して(なんでこんなことにムダな勇気を…)アッシュに聞く。




「ユーリが見当たらないんだけど」



そう言い放つと、

まるで空気を抜かれていく風船みたいにしぼんだ顔をして言う。


「…スマ…、なんでこんな時にあの変態吸血鬼の話を…」


変態って…キミが果して言えるのかい?アッシュ君。



「そーいう話をしてるんじゃないの。ほらもう、はなして」

ボクは、自分の体にへばりつくようにして

抱きついてきてるアッシュを引き剥がす。



「あぁ〜、スマぁ〜」 ……情けない。



「で、何処にいるか知らない?」

「…知らないッス」


ブスっとした顔で答えるアッシュ。


…絶対に知ってるなコレは。

なので更に問い詰めてみたりしちゃウ。


「これでも…ダメ?」

アッシュの好きそうな、

手を前で組んで上目遣いをしてお願い…ってヤツ。


完璧ダ。


案の定アッシュがたじろぐ。


「うぅ……。ユーリならMZDに会いにいったッスよ」

「…何しに?」


色々と気になるけど、まずソレが一番気になる。

「さぁ?そこまでは教えてくれなかったッスよ」



ナゾは深まるばかり……横の変態犬を残して。




「スマぁ〜」   コノヒトダメダ…。






                                    ◆next◆




お月見ネタです。
去年から途中までアップしてたんだよなぁ〜コレ(;^_^A アセアセ・・・
deuilのわいわいとしたとこが伝わればいいです
背景お団子じゃなくてワッフルですね・・・すいません
まぁおいしそうだからよくないですか?w もちろん、「空に咲く花」様よりです


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