―粉雪の降り積もる中で―[2]
――「あーおいしかった」 「それはよかったッス」
…きっとアッシュが犬モード…じゃなくて、狼に変化してたら尻尾パタパタ振ってそうな、
そんな笑顔で返してくれる。あぁ〜これだからアッシュはぁぁ〜。
やばいやばい。ボクは心の中でのろけつつ、アッシュに聞く。
「ネェ〜、これからドコ行くの?」
返ってきた返事は
「とってもいい所ッスよ」
いい所…アッシュのいい所ってのは大概やらしいところなんだよネェ…
ボクのそんな目線に気づいたのか、アッシュがあわてて言う。
「へ、変なところじゃないッスよ?」
ホントカナァ〜?
「ホントッス!」 …なんでこの犬は人の考えてることが分かるんだろうか?
まぁいいけどネ。
そんな話をしながら歩くこと15分。
もうとっくに街から外れてしまって、とても静かだ。
こんな所に何かあったっけ?
ボクが考え込んでると、
「ついたッスよ」
「ここって…」
思い出した。
ボクとアッシュが初めて出会って、
そして
"コイビト"になったところ。
街の外れの丘の上。
何も無いところだけど、ここには何か"アタタカイモノ"がある気がするんダ…。
「スマ、上を見てみるッス」
そういわれて上を見上げると、
街では決して見ることの出来ない満面の星空。
「スゴ…キレイ…」
凄すぎて声もでない。
しばらく声も無く、夜空に輝く星を見つめていると、
またアッシュが声をかけてきた。
「下もキレイッスよ」
今、ボクらは丘のふちに立ってたんだけど、下を見てびっくりした。
「街が……街が輝いてる…」
そうなんだ、今日はクリスマス・イヴ。
もちろん街だってきれいなイリュミネーションで彩られている。
その光景はまるでさっきまで見ていた星のようでとてもきれい。
なんだかアッシュのこと…更に好きになっちゃったヨ。
そうしてまた、無言で景色を眺めていると…
「スマ…、前から聞きたくて、でも怖くて聞けなかったことがあるッス」
「えっ?」
「スマ…、スマのその左目は何があったんスか?」
いつかはくるだろうと思っていた質問。
でも……
でも、何でよりによって今日なんだろうか。
神様
もし、貴方がこの出来事を起こしたというのなら、
ボクは貴方を殺したい……
NEXT